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2018年12月9日日曜日

[102] 現代日本の蔵書家たち0 プロローグ



★漂流教室関谷「ここからは対談形式です。私は漂流教室関谷。私に関して詳しく知りたい方は楳図かずおの『漂流教室』をご覧ください」
☆純クレ梅本  「私は梅本と申します。詳しくは松苗あけみの『純情クレイジーフルーツ』をお読みください」
★☆二人一緒に「私たち二人が、これから現代日本の蔵書家たちについて解説して行きます。
        だいたい1970代以後の蔵書家を扱っています。それ以前の時代は こちら をご覧ください」
☆純クレ梅本 「ブログをご覧の皆様も、他にもこういう人がいてこれくらい本を持ってるんだけど、って情報がございましたら こちら へお知らせくださいね。有名無名にかかわらず、すぐ管理人が追加しますから」


★関谷「ところで、所蔵数1万冊以上の蔵書家だけ紹介するって、ハードル高すぎないかな? 
    世間的には2千冊、3千冊の人でも立派な蔵書家として通ってるよ。」
☆梅本「まあ、4LDKの家に子供二人いたら本棚10本ぐらいしか置けませんね。」
★関谷「日本人の持っている冊数の平均って、いったいどのくらいなの?」
☆梅本「76冊という結果が出てます。これは日本国内を都道府県別に調査してます。
    また別のアンケートでは91冊という結果になってます。こっちは世界各国を比較した国際的な調査です。2つを見ると、まあ100冊には届かないぐらいじゃないでしょうか?」
★関谷「どの県の人が一番本持ってるのかな?」
☆梅本「宮城ですね。本も漫画も一位です。本は全国平均が76冊のところ、134冊持ってます。   漫画は全国平均が75冊のところ、236冊も持ってます。宮城、マンガ読みすぎですね」
★関谷「宮城県人の蔵書数は平均の二倍で、漫画では三倍ということだな。」
☆梅本「東北って、小中学生の学力も平均より高めでしょう?」
★関谷「じゃあ、今度は国際比較の方はどうなってる?」
☆梅本「こっちの調査では、日本の家庭の平均蔵書数は91冊になってるんですが・・・
    他の国に比べると割と低めなんです。日本人は識字率が高く、平均IQも高いのに・・・
    アメリカが119冊。イギリスが116冊。フランスが113冊です。」
★関谷「どこが多いの?」
☆梅本「世界一になったアイスランドの336冊というのはなんかちょっと多すぎなんですけど大体北欧の国は多いです」
★関谷「日本が少ないのは、本と同じぐらい漫画持ってるからじゃないか?」
☆梅本「かもしれません。91冊を倍にしたらドイツの134冊より上になりますから。大体ロシア(183冊)と同じぐらいですか。でも北欧の200冊越えには及びません」
★関谷「逆に少ないのは?」
☆梅本「フィリピンが22冊で、調べたうちでは最下位です・・・」
★関谷「ソマリアとか、ジンバブエならもっと少ないだろうな・・・」
☆梅本「中国も、今は少ないですね。平均44冊だから。」
★関谷「中国はずっと共産国家だったからだろ。でもあそこは記録民族だしこれから経済発展したら・・・」
☆梅本「かなり増えてくるでしょうね。
    ところで、管理人が紹介する蔵書家を原則1万以上にしたのは、キリがいいのと、千レベルまで紹介してたらキリがないからです。こういうのはなにはともあれキリの問題です。『個人文庫事典』って本があって、これは図書館や大学に寄付した人の文庫ばかり載せてます。数百・数千冊クラスの人なら何百人もいるんですけど、それが1万冊を越える人になったら、一気に数十人に減っちゃう。1万冊って、おっしゃってた様に結構高いハードルなんです。そりゃそうですよね。家に40本も50本も本棚置いてる人はあんまりいませんから。それともうひとつ、第二次大戦当時に世界を動かしてた20世紀の大政治家って、だいたい1万越えぐらいなんです。チャーチルが1万冊。ルーズベルトが1万3千。ヒトラーが1万7千。スターリンが2万冊。世界を動かそうと思ったらこれぐらいの書斎にふんぞり返って本読んでなきゃダメって事です」
★関谷「別に世界動かすために本読んでるわけでもあるまいし」
☆梅本「だからこのプロローグでは、本番に入る前に、著名人で数千クラスの人も紹介することにしました。」


★関谷「石原慎太郎は逗子の別荘に3200冊あったらしいな。別荘でこれだけだから本宅を合わせたら」
☆梅本「1万越えるかもしれませんね」
★関谷「内藤陳なんかはどれぐらい? あの有名な写真ではかなり多そうだけど」
☆梅本「分かりません」
★関谷「生田耕作はどう? 稀覯本の収集家としてかなり知られてるぞ」
☆梅本「分かりません」
★関谷「針生一郎は蔵書目録が出版されてた筈だよな。どれくらいの冊数だ?」
☆梅本「数えてないので、分かりません」
★関谷「何聞いても分からない分からないって・・・・」、
☆梅本「分かる人からゆっくり解説していきますから先を急がないでください。まず夏目漱石が3068冊です! 」
★関谷「ふーん。漱石でそれぐらいなの? 「鏡像フーガ」で紹介した鴎外の六分の一じゃないか。」
☆梅本「まあ漱石は蔵書家ってタイプじゃないですし」
★関谷「というか、そもそも漱石は現代人じゃないだろ!」
☆梅本「ええ、「鏡像フーガ」では漱石みたいに一万に満たない人や稀覯本の収集家でもない人には全く触れてなかったので、このコーナーの最後でまとめておきますね。
    じゃあ今はまず、新しい方から紹介していく事にします。ピース又吉さんが2000冊の所有です」
★関谷「いきなり小物きたな」
☆梅本「ちゃんとこの人の本を読んだんですか?」
★関谷「武富の漫画版を読んだ。又吉と武富の暑苦しさが交じり合ってついて行けなかった」
☆梅本「じゃあ次は大物にします。戦後最高の詩人の一人と言われた西脇順三郎先生です。ノーベル賞候補で慶応で詩学の講義もされてましたね。洋書1200冊と雑誌1000冊の計二千二百なんですけど」
★関谷「ドナルド・キーンに嫌われて途中から候補を下ろされた人だな。大物でも冊数は又吉と同じぐらいか」
☆梅本「これは文庫に寄付した分です。洋書しかないって事はあり得ないので実数はもっと上でしょう。西脇先生に限らず文庫に寄付した方は実際はもっと持ってる事を計算に入れてくださいな」
★関谷「確かにあんまり変な本は大学や図書館に寄贈できない」
☆梅本「次は映画評論家の飯島正先生です。3315冊を文庫に寄付されてます。これも洋書なので飯島先生の全蔵書じゃありません」
★関谷「この人は日本の映画評論家の中で一番まともな人だったよな」
☆梅本「あと、ジブリの鈴木敏夫が四千冊ぐらいだそうです。それと国際政治学者の高坂正堯さんが4108冊。イスラム史の佐藤次高さんがやっぱり四千冊。」
★関谷「文庫に寄付した人は、実際はもっとあるかもしれないってことだな」
☆梅本「ええ。で、西洋経済史の大塚久雄さんは6058冊を文庫に寄付してますね。」
★関谷「戦後リベラルの学者として丸山・大塚というふうに併称されてたけど、丸山真男の六分の一なんだね」
☆梅本「今回で一番興味深いのは書誌学者の寿岳文章さんです。洋書4615冊と和書2405冊の計七千冊を文庫に寄付です」
★関谷「こういう人は本のことを一番よく知ってるからな。冊数ではもっと上がいくらでもいるんだろうが、内容は選び抜かれてるだろう。」
☆梅本「ええ、蔵書目録を拝見したいですね。えっと、次は歴史小説家の海音寺潮五郎です。」
★関谷「歴史小説家としては司馬遼太郎と並び称されてた人だな。何冊?」
☆梅本「7193冊です。思ったより少ないですね」
★関谷「そりゃ普通の人に比べりゃ全然多いけど、歴史小説家は資料を大量に必要とするのにな。司馬なんかは蔵書六万だろ」
☆梅本「次、歴史学者の佐伯有清も8000冊を文庫に寄付してます」
★関谷「邪馬台国本って偉い学者がとんでもない内容の本を出してる事が多いけど、この人のは結構ちゃんとしてたっけ」
☆梅本「ここから先は、9千冊ぐらい文庫に寄付してる人たちなので皆さん実際には一万以上だと思います。まず東京大学の憲法講座に戦後君臨していた宮沢俊義さんの8965冊。内容は和書が5685冊で洋書が2819冊。雑誌が461冊。
★関谷「こういう人は研究室の蔵書とか大学図書館で必要なものは手に入るのにやっぱり家でも本棚何十本も並べてるんだな。」
☆梅本「首相経験者で一番の読書家と言われていた大平正芳ですが、これも文庫に9100冊残してます。」
★関谷「文芸評論家の山本健吉も9500冊だな。」
☆梅本「ええ 戦記物の児玉譲さんも9800冊。」
★関谷「詩人・文学史家の日夏耿之介は9940冊か。これなんかもう1万で紹介してもいいよね」



☆梅本「では最後に、明治から昭和の前期にかけての著名人でそこまですごい量でもなく稀覯本の収集家でもないので、鏡像フーガで紹介してなかった人たちに簡単に触れていきます。関谷さんペーパーをご覧になってますか。」
★関谷「吉田茂が800冊って・・・ 少なすぎないか。外交官出身の首相だろ? チャーチルとかルーズベルトに比べたら・・・」
☆梅本「うーん。外交史料館にある吉田茂の本棚がこれぐらいだそうです。ほんとはもっとあるかもですけど。あと和辻哲郎が5000冊、田辺元が図書雑誌含めて6000冊ですね」
★関谷「二人とも日本を代表する大哲学者だな。西田幾多郎はどのぐらい?」
☆梅本「また分かったら追加します。あと、劇作家の小山内薫も文庫に寄付したもので6000冊ですね。
★関谷「阪急電車の小林一三が7000冊か・・・ 骨董コレクターとして有名だけど本もかなり・・・」 
☆梅本「宝塚歌劇の生みの親ですよねこの人。映画会社の社長やったり、阪急デパートとか不動産開発とかも」
★関谷「へー 石原莞爾が8000冊も持ってたの・・・」
☆梅本「軍人としてはかなり多いですよね」
★関谷「石原莞爾は軍事思想家というか、そっちの面で戦後は評価されてるからな。読書家だったんだろう」
☆梅本「吉野作造が 和書5223部(8032冊)、洋書554部です。これは例の明治文化研究の資料でしょうか?」
★関谷「吉野作造って大正デモクラシーのイメージが強すぎるから晩年の明治研究はみんなあんまり知らないよな。これが一番重要な学問的業績なのに」
☆梅本「では、次回からいよいよ蔵書一万越えの人に触れていきます」



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