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2018年12月13日木曜日

[104] 現代日本の蔵書家たち2 二万クラスのひとたち

★関谷「じゃ今日は2万冊越えの蔵書家を」
☆梅本「富永正一ってブロガーが2万冊あるらしいです。それと作家の日垣隆って人。蔵書2万冊で本棚が百本あるそうです」

★関谷「もっと有名どころでは?」
☆梅本「その言い方は日垣さんにかなり失礼ですけど、ムツゴロウ・・・・畑正憲がやっぱり2万冊。水上勉さんも2万冊です。これくらい有名な作家さんなら文句ないですよね?
    水上勉のように国民的に名前が通った作家の場合、死んだら必ず記念館が立ちますから、生前の蔵書などはそこで保管されることが多いです。大佛次郎や司馬遼太郎もそうでした。」
★関谷「こういうのが本にとっては一番幸せなパターンなのかな?」

☆梅本「それと・・・だいぶ前に亡くなった評論家の加藤周一も2万冊。」
★関谷「加藤周一ぐらい論域が広ければそれぐらいあってもまあおかしくないね」

☆梅本「それと下村寅太郎さんは・・・ これがちょっと面白いんです。洋書が一万冊、和書が一万冊で計二万冊なんですが、洋書一万冊は関東学院大学に寄付、和書一万冊は関西学院大学に寄付です。」
★関谷「ほぉー。スッキリしてるというかハッキリしてて分かりやすいね。この人は西田幾多郎門下で京都学派の長老なんだけど、あのややこしい理屈をこねくり回すグループの中で、ルネサンス文化史とか、書く本も割とわかりやすい人ですよ」

☆梅本「昭和を代表する漢学者の諸橋徹次さんも2万冊なんですが・・・」
★関谷「たしか岩崎家の静嘉堂文庫に吸収されたんだよな。あそこは三菱の財力でいろんな蔵書家の蒐集を買収して巨大化した。」
☆梅本「ええ、でも息子さんの諸橋晋六氏が三菱商事で社長・会長を務めて三菱グループの大幹部になっちゃうんです。それで三菱系の静嘉堂文庫の理事長にも就任するんです。」
★関谷「親の仇を息子がとったのか! 」
☆梅本「あっぱれな息子ですね。
    さあ先を続けましょう。広辞苑を編纂した新村出が大阪市大に7579冊を寄付してますが、他に雑誌があってそれを含めたら2万を越えるそうです。そして日本近世史の泰斗、小葉田淳先生も2万冊です。うち雑誌が9400冊です。」
★関谷「あの・・・閲覧者の方も一応わかってると思うんだけど・・・学者の蔵書における雑誌というのは専門的な学術誌であって、週刊文春とか婦人画報とかじゃないからな」
☆梅本「そんなの当り前ですよ。でも作家の蔵書における「雑誌」の場合は、基本はやはり文芸誌なんですけどそういうものも結構あったりするんです。だから要注意です。さて、伊藤忠の調査部長だった三輪裕範さんも2万冊。この人いろいろ著書も多いです。あと日弁連会長の和島岩吉も2万ぐらい。財界人では資生堂会長の福原義春がオフィスに1000冊と自宅に2万冊。2万クラスはあと、食べ物関係のうんちくで最近テレビに出てる小泉武夫って人もです。それと・・・」

★関谷「それと?」
☆梅本「荒木精之さんです。本と雑誌で2万783」
★関谷「これは一体誰? ひょっとしてまた地方の名士?」
☆梅本「熊本の地方文化人で小説家で思想家だそうです。私も恥ずかしながらこの方は全く存じ上げませんでした」
★関谷「熊本では有名な人なんだね。もうちょっと上いって二万五千ぐらいの人は?」
☆梅本「えーと・・・ プログラマの小飼弾に・・・」
★関谷「それと?」
☆梅本「日本中世史の最高権威だった石井進教授」
★関谷「案外早く死んだ人だね。こういう人は専門の本はみんな研究室にあるから、自宅のはそれを離れて知識を広げていくための・・・」
☆梅本「専門以外に何でも知ってるタイプ。丸山眞男とかそうですもんね。
    ただ、中国文学の吉川幸次郎さんがやっぱり2万4千ぐらいあるんですが、これなんかどうなんでしょうね? 」
★関谷「これは文庫に寄付のパターンだから漢籍ギッシリじゃないかな。よく分からないけど」
☆梅本「戦後を代表する考古学者の末永雅雄先生ですが、この方も2万5千ありました。ただ内訳をみると発掘報告が3000あって、逐次刊行物が1万1750なんです。」
★関谷「逐次刊行物はともかく、発掘報告まで蔵書に入れていいのかって問題だな。これは資料といった方がいいかもしれませんね」
☆梅本「うーん、発掘報告抜きでも2万は越えてる人なんで一応このページで紹介しておきます。えー引き続き先へ進めます。2万台も後半にさしかかります。
    ハンガリー文学者の徳永康元という人が2万~3万と言われてるんですが、もうちょっとはっきりした数になると、吉田精一さんが文庫に本雑誌など27,354点を寄付してます。」
★関谷「明治以後の日本文学の研究者は星の数ほどいるけど、学士院の会員に選ばれたのはこの人一人なんだよな。東大の教授だから研究環境は完璧なはずで、それ以外にこれだけ私蔵してたって、一体どんな本なんだろうね?」
☆梅本「さあ今日最後の人です。マルクス主義哲学者の古在由重さんで、2万8865冊です。これはもう3万に近いですね。」
★関谷「この人の岩波文庫の「ドイツイデオロギー」は名訳だったな。」

☆梅本「今回、2万クラスで紹介した蔵書家の方は計21名でした。」

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