Translate
2018年12月9日日曜日
[103] 現代日本の蔵書家たち1 一万クラスのひとたち
★漂流教室関谷「こんにちは。今日から、私たち二人が現代日本の蔵書家を紹介していきます。今日は所蔵数一万冊以上のクラスです。」
☆純クレ梅本 「ブログをご覧の皆様も、他にもこういう人がいてこれくらい本を持ってるんだけど、って情報がございましたら こちら へお知らせくださいね。すぐ管理人が追加しますから」
★関谷「で、一万越えの蔵書家なんだけど。誰がいる?」
☆梅本「まず作家の池波正太郎。それと澁澤龍彦。イラストレーターの赤瀬川源平。それと芸能界を代表する読書家と言われた児玉清さん。この人たちの蔵書がだいたい1万冊ぐらいです」
★関谷「寿司屋に厳しい時代劇作家と、女装癖のある幻想文学作家がちょうど同じぐらい本持ってたというのが面白いね。赤瀬川の方はイラストレーターというより・・・作家とか漫画家といった方が」
☆梅本「マルチな才能です。『櫻画報』は名作ですね」
★関谷「児玉清だけど、芸能人ではもっと本持ってる人がいたような・・・・・」
☆梅本「森繁」
★関谷「ああ、森繁」
☆梅本「森繁久弥さんは三万冊越えてるのでもう少し後でやります。あと松原隆一郎とかいう経済学者が1万冊です。おしゃれな書庫を新築されたそうですよ。」
★関谷「ほんとだ。『書庫を建てる』って本書いて自慢してる。すっきりまとまった良い書庫だな・・・」
☆梅本「長岡博男っていう民俗学者が1万冊。塚本勲っていう大阪外大の朝鮮語学者が1万439冊。こっちは朝鮮語文献がほとんどだそうです。二人共私の知らない人です」
★関谷「文庫に寄付の口だな」
☆梅本「ええ。中国史の倉石武四郎先生も漢籍4300、現代中国語2300、和書3300、洋書600の合わせて1万500冊を文庫に寄付です。それとあの桑原武夫さんも1万400冊でこれは・・・」
★関谷「文庫としてどっかに寄付したけど、捨てられた」
☆梅本「そう。捨てられましたね。捨てたのは京都市」
★関谷「桑原さん稀覯本の蒐集家ってタイプじゃないから軽く見られたかな? 倉石さんの方は日本語の本が全体の三分の一なのか。こういうのが学者の本棚なんだよね」
☆梅本「中国文学の小川環樹先生も1万1400冊を文庫に寄付されてるんですが、和書が1万1千と洋書が400冊で漢籍がないんです。ご専門だから無いって事はあり得ないので本来なら全部で3万越えてるかもしれません」
★関谷「このひと湯川秀樹の弟で、兄弟全員京大教授じゃなかったっけ?」
☆梅本「たしかご長男だけ東大教授だったと思います。他に早世した弟さんもいます」
★関谷「日本の近代政治史のドンだった岡義武教授が9007冊、と・・・ これ足りないんじゃないの?」
☆梅本「岡義武さんは明治関係の1700冊だけ別のとこへ寄付されてるんです。前回触れた吉野作造の明治文化研究の文庫と一緒にしておくためなんだって。この人吉野作造の弟子でその研究も引き継いでるんです」
★関谷「つまり合計して一万越えになるということか」
☆梅本「今日は紹介する人が多いのでどんどん進めちゃいます。中国学の神田喜一郎さん。京都国立博物館の館長もされてましたね。1万700冊です。英米法の高柳賢三が1万1428です。東京裁判の日本側弁護団の団長か副団長だったひとですね。評論家の林達夫も1万ぐらいでこれは明大へ寄付。宗教学者の堀一郎(1万1千)と民俗学者の平山敏治(1万4千)は成城大に寄付。政治学者の宮田光雄は職場の東北大学に1万4637冊を。」
★関谷「インド学の泰斗だった辻直四郎先生も東洋文庫へ寄付した分だけで1万2千か・・・ おなじ東洋学ではイスラム哲学の権威の井筒俊彦が1万3700冊だけど、井筒さんはイラン革命のときにあっちから貴重な文献を大量に持ち帰ってるんだよね。これも文庫として寄付だ」
☆梅本「そして、あの竹内理三さんが1万1500冊。戦後を代表する中世史家の一人です。」
★関谷「竹内さんの平安遺文とか鎌倉遺文のような史料集成の仕事は戦後の日本史学の金字塔ですからね。」
☆梅本「一方、小松芳喬先生は英国経済史関係の約1万2千を寄付してます。これ全部洋書なので全体なら2万ぐらい行くかもしれませんね。あと京大の末川博さんも1万2千を寄付です」
★関谷「民法の世界では東の我妻、西の末川と言われ並び称されてた人だな。」
☆梅本「名著『言論出版の自由』で知られる伊藤正己先生は2カ所への寄付分合わせて14510冊。」
★関谷「東京大学法学部長で日本学士院の会員、最高裁判事もやった人だな。」
☆梅本「プロレタリア文学を代表する作家の中野重治は1万3千冊を文庫に寄付です」
★関谷「酒の席で小林秀雄に泣かされた作家は大勢いるけど、その一人だな。」
☆梅本「それと白井鐵造も1万3000を寄付。」
★関谷「誰だそりゃ?」
☆梅本「宝塚の演出家です。私最近宝塚に凝ってるんですけどあのキラキラ舞台の基礎を作った人。レビューの王様と言われてました」
★関谷「そこまで知らないよ。ところで、同じ所持1万ってことで児玉清も辻直四郎もみんな一括りにしてるけど、翻訳ミステリのマニアとサンスクリット文献学の最高権威じゃ本棚の内容が全然違うよね。これはこのサイト全体に言えることだけど」
☆梅本「いいんじゃありません? もともとそういう企画なんだから。そもそもアマゾンアフィリを始めるにあたって、商品リンクしやすい形式のブログは何かってことで管理人はこのテーマにしたわけです。各人の本棚の内容だったらここを取っ掛かりに調べてくださいな。あくまでここはそういう初心者向けサイトですよ」
★関谷「しかし・・・」
☆梅本「どんどん進めていきます。今日は多いんです。小野崎正明さんが1万3600冊です」
★関谷「大道興業の副組長だな。ヤクザの親分でもそんな読書がいるのか」
☆梅本「それは同姓同名の別人です。東北弁護士会の会長の方です。」
★関谷「そんな地方の名士を出してきて、俺が知ってるわけないじゃないか!」
☆梅本「国文学者の川口久雄さんが1万7千です。内訳は和書漢籍が13000に学術誌4000」
★関谷「これも知らない・・・また地方の名士か?」
☆梅本「自分の知らない人を全部地方名士にしないでください。川口さんは金沢大学の教授で・・・」
★関谷「やっぱり地方名士じゃないか?」
☆梅本「業績は全国的にも知られてます。wikiにも載ってます」
★関谷「最近は誰でもwikiに載ってるよ。」
☆梅本「松本唯一さんが史料14938ですが、絵葉書や写真を除くと1万3千ぐらいですね。」
★関谷「これも知らない・・・ 地方名士か」
☆梅本「地方の名士なんでしょうね。九州の大学教授で火山学者だそうです。このコーナーは有名無名にかかわらずその数持ってる人は全部載せていくので我慢してくださいな。次は誰でも知ってる人です。作家の山本有三ですから。1万5千冊。」
★関谷「山本有三はもっと昔の人だと思ってたけど、1974年に死んでるから一応このコーナーでいいのか。13000を東京都に寄付して1700を近代文学館に寄付して、残りは陽明文庫に寄付・・・ なんで陽明文庫に?」
☆梅本「晩年近衛文麿の伝記書くために近衛家の資料集めてたそうです。だから近衛家の陽明文庫にって。山本有三は近衛文麿の親友だったそうですよ。さあグズグズせず紹介を続けていきます。もうちょっとで終わりですから。医学史の宗田一さんが13300冊寄付です。次に作家・・・というよりノンフィクション作家といった方がいいのかしら、杉森久英さんが本10487と雑誌3393で1万4千近くを寄付です。それと中国文学者の増田渉が1万5千を文庫に寄付。新日本汽船の会長だった松本一郎さんが1万6千冊を寄付です。内容は主に港湾海運貿易関係のものらしいです。」
★関谷「これで最後か」
☆梅本「最後は国語学の泰斗、山田孝雄先生です。1万8千冊。これもやはり寄付ですね」
★関谷「今日はいったい、何人紹介したんですか?」
★梅本「34人です。でも、みんな寄付ばかりですね。貴重なものも多いので遺族は売ればお金になるのに」
★関谷「コレクターは自分の作った宇宙を壊したくないんだろうね。」
☆梅本「でも桑原さんみたいに捨てられちゃうと・・・」
★関谷「そんな例は多いみたいだよ。高野山大学の教授だった藤森賢一って人も1万6千冊を市に寄付して、死後十年放置されてたって」
☆梅本「本なんて興味ない人にとっては迷惑以外の何物でもないですもんね」
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿